社会人15年目 営業
先輩にも先輩がいる

大学を卒業してメーカーに6年ほど営業職として勤めた。就職の際の志望動機はとくに強い気持ちも無く、とりあえず雇ってくれるところという非常に安易な理由から。しかし、結局仕事の過酷さにギブアップ。次の仕事も決まっていないままに辞めてしまった。今の会社はいわゆる出版会社。その会社の広告営業職としての求人が出ていた。学卒の就職活動の際に若干興味のあったマスコミや広告業界だったので、また安易な気持ちで説明を聞きに行ったら、結局入社することになった。営業職はモノやサービスを売る仕事。どんな業界でも営業職という仕事は大差が無い、であれば、売るモノやサービスが少しでも自分が好きなものでないと続かない。という思いから、この会社で営業職を続けることにした。  京都・滋賀の街の情報を届ける雑誌を作っている。その雑誌の中に載せる広告が自分の売るべき商品だ。全国誌ではなく、地域に密着した雑誌なので、クライアント(広告主)も大手企業よりも地元の中小企業が多い。それ故に人と人のつながりが必要に感じることが多々ある。  今の会社に入ってすぐの時に、あるクライアントからお客様を紹介してもらう。そのクライアントには紹介料を渡したり、マージンなどを支払ったりしないのだが、とても積極的に私の仕事を手伝ってくれた。その方にはメリットは無い、逆に時間をとられたり、煩わしいことが増えていたことだろう。最終的には紹介してもらったお客様は契約にはつながらなかったが、何故にここまで他社の社員である私に対して尽力してくれたのかを伺ってみると、その方自身の若い頃に同じように他社の先輩が仕事を教えてくれたとの事。だから、どこかでそういう若い者がいれば会社など関係なく、ましてやメリット・デメリットも気にせずにできる限りのことはする。それがその当時の先輩に対しての恩返しになると。だからあなたも後輩ができた際には真摯に接して育ててあげてくださいとも仰った。  私にも今は、自社に後輩や部下がいる。もちろん、上司もいる。会社や上司の指示命令や方針が自分の考えと合わないこともある。自分の思いを抑えてまで後輩たちに指示命令をすることに疑問を感じることもある。そんな時、あの人のように後輩たちに接することができているのだろうかと不安になる。ましてや、他社の社員に対してそこまでできる余裕があるのかとも思う。  ただ、後輩や部下が、仕事がうまく運び、契約がとれたり、目標を達成したりして喜んでいる姿を見るとこちらも嬉しく感じるのがわかった。自分の事以上に嬉しいものである。その仕事が大きかったり、難しかったりすればするほど、彼らの喜びも私の喜びも大きくなる。これは、今までの後輩や部下がいない時期には感じられなかった気持ちだ。あの人が言っていた若い人間を育てるということは自分にとってもこのような効果をもたらすのかとあらためて実感している。  あなたの夢はなにかと問われると、「金持ちになる」とか、「独立する」とか、実質的なことも含め様々なことを考える。自分の生活の多くの部分を占めている、仕事をしている時間を充実した時間にしたいというのが根底にある。今後、自分はどのような職に就いているのかわからないが、『自分よりも若い人間を育てて、喜びを共感して、働いていく』ということはどんな分野に自分を置いても変わらないと思う。そうありたいとも願う。  堀川豊 35歳
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